虫歯治療

歯髄保護を目的とした虫歯治療

歯髄の中には神経組織と毛細血管が存在し、歯に栄養を届けています。そのため歯髄の機能を失った歯はもろくなり、折れたり欠けやすくなります。歯は削れば削るほど耐久性が落ちますので、歯を多く削って神経も抜く従来の虫歯治療では、将来的な抜歯のリスクを高めてしまいます。

虫歯は感染症ですので、重要なのは「歯を削ること」ではなく「細菌をなくすこと」です。細菌が残っていると再び虫歯になり(これを二次カリエスと言います)さらに歯を削ることになります。歯を削る量を最小限にとどめ、神経も残すことができる3mix法やMTAセメントは、長い目で見て歯の寿命を延ばすことができる治療と言えます。

なるべく削らない虫歯治療 3mix法

3mixとはメタロニダゾール、ミノサイクリン、シプロキサンという3種類の抗生物質を混ぜ合わせた抗菌剤のことで、虫歯菌を殺菌するための治療薬として使われています。虫歯が神経の近くまで到達しており、通常であれば神経を抜かなければならない症状に対して3mix法は大きな効果を発揮し、歯髄の保護と軟化象牙質の再石灰化を促します。

3mix法のメリット

  • 治療の痛みが少ない
  • 歯を削る量を減らせる
  • 神経を残すことができる
  • 通院回数が数回程度で済む
  • 歯を長く健康的に保つことができる

3mix法と従来の虫歯治療法との違い

従来の虫歯治療はう蝕されている部分を完全に削り取りますので、虫歯が深く削ると神経が飛び出してしまうようなケースにおいては、やむなく神経を抜くしかありません。
3mix法ではう蝕部分を全て削らず、あえて虫歯を残した状態の歯に3mixを塗布します。その上を歯科用セメントで埋め、最後に詰め物をして治療は終了です。治療後は塗布した3mixが数ヶ月間かけて虫歯菌を殺菌し、軟化した象牙質を硬い象牙質に戻していきます(これを再石灰化と言います)。

神経を除去する工程がない分、3mix法による治療は早ければ2、3回程度の通院で終わります。従来の虫歯治療と比べて歯を削る量が少なく、削る部分も神経から遠い場所になりますので、治療の痛みを大幅に減少できるのも3mix法の特徴です。

ただし、虫歯が明らかに神経に到達している場合や、神経が死んでしまっている状態だと、3mix法による治療が難しくなります。患者様の症状やご希望などを踏まえながら最適な治療方法を決定させていただきます。

殺菌力が高く人体にも優しいMTAセメント

MTAセメントとは、虫歯治療や根管治療に用いられる歯科用セメントのことを言います。細菌のほとんどはph9.5で死滅すると言われておりますが、MTAセメントはそれを上回るph12の強アルカリの性質を持っており、露出した神経の保護や歯に空いた穴の修復に使用されています。高い殺菌力があり、3mixと同様、う蝕部分を全て削らずにMTAセメントで覆って殺菌することで、神経を取ったり抜歯をしなければならないケースでも歯髄の保護が可能です。
MTAセメントは生体親和性が高く、患者様にも安心して治療を受けて頂けます。また、水分があっても歯としっかりと接着し、封鎖性にも優れているために、細菌が侵入する可能性が低く二次カリエスになりにくいという利点もあります。

歯髄保護の重要性

歯質は主にエナメル質と象牙質に分けられます。エナメル質は歯の一番外側にあたる部分で最も硬く、外部の刺激から歯髄を守る役割があります。象牙質はエナメル質の下層にある組織で、歯を構成している主成分にあたります。象牙質はエナメル質に比べて柔らかく、虫歯の侵食も早いのが特徴です。

歯には自然治癒能力がないため、欠損部が勝手に治ることは残念ながらありません。虫歯治療で歯を削ったり、何らかの原因で歯が欠けてしまった場合は、人工的な材料を使って修復する必要があります。また、歯根破折は虫歯、歯周病の次に抜歯の原因に挙げられることも多く、治療後に歯根破折を起こさないための予防措置も重要となります。

歯根破折とは

ある日突然、歯の根が縦に割れたりひびが入ってしまうことを歯根破折と言います。神経を取った歯には栄養が行き届いておらず、もろく欠けやすい状態になっています。そこに力がかかり、歯が耐え切れずに割れてしまうのが歯根破折の大きな原因の一つです。また、重度の歯ぎしりや食いしばりがあるケース、虫歯治療を繰り返すことによって歯質が減っているケースなどにおいても、歯根破折が起こる可能性は高いと言えます。

歯根破折の治療法としては、割れた部分から細菌が侵入するのを防ぐために抜歯をすることがほとんどで、欠損部は入れ歯かブリッジ、もしくはインプラントで補うことになります。患者様ご自身の歯を守るために、歯根破折への対処法として当院で行っているのが含浸象牙質の生成です。

含浸象牙質で歯根破折を防止

含浸象牙質(樹脂含浸象牙質とも)とは、象牙質にレジンを浸透・硬化させ、歯質を構成するコラーゲンやハイドロキシアパタイトと絡み合わせることでできる人工的な象牙質です。もともと象牙質であったところに、象牙細管からレジンを流し込んで、含浸象牙質という別の性質を持った象牙質に変質させます。表面的な接着ではなく、象牙質にレジンが染み込む形で融合するため、接着力に優れた樹脂含浸層が完成します。

本来象牙質は外からの刺激に弱いですが、含浸象牙質は外部刺激から象牙質を守り、歯根破折や虫歯の再発の防止に貢献しています。