歯周病を予防するには、日々のブラッシングや歯科医院の定期健診でプラーク内の歯周病菌を除去する必要があります。こう言うとシンプルで簡単なように聞こえますが、歯周病を完全に予防することは容易ではなく、治療方法も患者様に合ったものでないと十分な効果は得られません。
だからこそ当院は歯周病の予防に力を入れ、定期健診を強くおすすめするとともに、歯周病になってしまった患者様へも原因と症状に応じた歯周病治療を提供しております。
歯周病治療の流れ
歯周病治療においては、まずは衛生士が患者様の主訴をお伺いし、次にドクターがお口の中の状態をチェックします。当院には日々技術の研鑽に努める衛生士が在籍しており、衛生士が単独で検査・診断を行えるほどの技量を持っています。
レントゲンや口腔内カメラを使った撮影を行い、患者様に合わせた歯周病プログラムを作成後、現在のお口の状況や治療方針をご説明します。TBI(歯磨き指導)や歯垢と歯石を除去するスケーリング後は、症状の程度に応じた治療を行います。
抗真菌薬による歯周内科治療(経口薬物療法)
重度の歯周病の場合や、通常の歯周病治療のみでは症状の改善があまり期待できない場合、当院では抗真菌薬による経口薬物療法を行っています。歯周内科治療は経口薬物療法とも呼ばれ、抗菌薬を服用するか、歯周ポケット内部に抗菌薬を注入するかのどちらかの方法で口腔内の細菌や真菌(カビ菌)を減少させます。
使用する薬剤は効果がありますが、あまりに使用し過ぎると薬剤耐性がついてしまいますので、状況や使うタイミングを見極めながら使用しています。経口薬物療法のみで歯周病が治る訳ではなく、症状が落ち着いてきたら、歯周外科治療などの別の処置に移行します。
フラップ手術による歯周外科治療
軽度の歯周病は歯冠部分と歯周ポケット内の歯石・プラーク除去で治療ができますが、症状が進行すると治療器具が届かないくらい歯周ポケットが深くなり、取り残しが出てきてしまいます。特に歯根の先端や根と根の間にある歯石・プラークを除去するために、当院が採用している方法がフラップ手術と呼ばれる外科処置です。
フラップ手術では歯肉を切開して歯根面を露出させ、汚れを取り除いていきます。歯科医師が目視できる環境下で治療ができるのは、フラップ手術の最大のメリットです。外からは確認できない部分の歯石・プラークの位置や量を正確に把握し、残さず除去していきます。最後に歯肉を縫合し、約一週間後に抜糸したあとは、セルフケアや定期健診によって再発を防止します。
リグロス歯科用液による歯周再生療法
当院では従来のエムドゲイン法に代わる新しい歯周再生療法として、厚生労働省から認定を受けた保険薬剤の「リグロス歯科用液」を採用しています。組織の再生には細胞・成長因子・成長するための場所が必要ですが、リグロスには細胞に対する増殖促進作用があり、欠損部に投与することで歯槽骨や歯根膜などの歯周組織を新たに生成することができます。
実際の治療では、歯周ポケットの深さや欠損の度合いによって、使用するかどうかを判断します。
レーザー治療を併用した歯周病治療
歯周病治療におけるレーザー治療はあくまで補助的なものですが、治療器具が届かない部分の歯石除去を外科処置なしで行うことができます。形状が複雑な歯周ポケット内も隅々まで光と熱を当てることができ、スケーラー(歯石除去に使う先端がフック状の器具)では取り残しがちな歯石も除去します。同時にプラーク内に潜む細菌の死滅も可能です。術後の回復が早く、治療の痛みと患者様の負担の両方を軽減できる治療法として、患者様の症状に合わせて採用しています。
歯周病とは本来、プラーク内の細菌が毒素を出して歯周組織に炎症を起こす病気です。つまり歯周病菌がいなければ歯周病になることは理論上ありませんが、「噛み合わせ」が原因で歯周病に似た症状が出たり、時に歯周病を促進させてしまうことがあります。
噛み合わせの力による歯周組織の損傷を咬合性外傷と呼びます。通常であれば咬合の負担は歯全体にバランス良くかかりますが、歯並びや噛み合わせに問題があると一点の歯に負荷が集中し、その部分に咬合性外傷を引き起こしてしまいます。
咬合性外傷には2つのタイプがあり、治療の方法も少々異なります。骨の吸収があるから歯周病、といった先入観にとらわれず、原因を見極め適切な処置を行うことが重要です。
2つの咬合性外傷について
咬合性外傷には、一次性のものと二次性のものがあります。名前だけ聞くと症状が2段階で進むように思えますが、この2つは全く別の原因で発症します。
一次性咬合性外傷
歯ぎしりや食いしばりがひどい人、開咬(オープンバイト)や反対咬合などの悪い噛み合わせの人は、無意識のうちに歯に過度な力をかけています。健康だった歯周組織がダメージを受け続けることで、歯周病ではないのに歯槽骨が溶けるといった現象が起こります。歯の動揺は見られますが、歯周組織の炎症はないのが特徴です。
二次性咬合性外傷
こちらはもともと歯周病の症状があり、咬合力が正常であるにも関わらず歯周組織を傷つけてしまうケースです。歯槽骨の吸収や歯周組織の炎症によって歯を支える力が弱っている状態ですので、そこに加わる力が大きくなくても歯は激しく動揺し、症状を一気に悪化させてしまいます。歯が抜け落ちてしまう前に早期に治療を受けましょう。
咬合性外傷の治療法
咬合力を全体に分散させる
「噛み合わせ治療」
一次性咬合性外傷は、噛み合わせを調整することでたいてい治ります。1本だけ強く当たってしまう高さのある歯や浮いている歯がある場合に、咬合による負荷が均等になるよう削るなどして調整します。
歯ぎしりや食いしばりを改善する
「マウスピース治療」
歯ぎしりや食いしばりによって生じる力は想像以上に大きく、就寝時の歯ぎしり・食いしばりはその力が最も大きくなります。就寝時にマウスピースを使用することで、症状の進行を防止する効果があります。
根本的な原因である
「歯周病治療」
二次性咬合性外傷の治療法は、歯周病治療とほぼ同様のものになります。また、歯周病と咬合性外傷を併発しているケースも少なくありませんので、その場合はプラークコントロールと噛み合わせのコントロールの両方を行います。